遅発性筋肉痛


運動の筋肉痛には、筋や筋膜が断裂したり挫傷した時に起こるものと、運動を行った数時間後や翌日に起こる、それよりも軽いものに分けられる。筋の断裂や打撲が原因の場合は、受傷後すぐに安静にして冷やしたり圧迫したりして、急性期が過ぎるまで安静を保つことが必要である。

一方、普段あまり使わない部位を使う運動をしたり、いつもより強い量の運動をしたとき、運動後に起こる筋肉痛は、遅発性筋肉痛と呼ばれ、運動直後から翌日にかけて発生し1週間以内に消失する。

年をとると運動後の筋肉痛が若い人よりも遅れて出てくるとよくいわれるが、データ的に見ると筋肉痛の発現と年齢には、はっきりした関連性はない。また、ストレッチングなどを運動の前後に念入りに行うことは、障害の予防や疲労回復という意味では有効であるが、遅発性筋肉痛を予防できるという根拠は薄い。

遅発性筋肉痛を予防するには、前もって何回も繰り返して筋肉痛を起こすような運動を行い、日ごろから鍛えておくことで年齢に関係なく予防できると言われている。また、準備運動の中で、これから使う筋肉に軽い負荷をかけたり、百回程度の反復、屈伸運動なども効果があると言われており、心がけたい。

腰痛のいろいろ


腰痛は、人類が二本足で直立歩行するために宿命的な疾患であるといわれており、昔は野良仕事など力仕事をする人に多くみられ、最近はコンピューターなどを扱うじっとしている人に多い。

その原因は実に雑多で、背骨やその周りの筋肉に原因のあるものや内臓や多臓器からくるもの、あるいはストレスが原因になっている場合が考えられる。そして、手術や注射、薬などいろいろな治療を受けながら再発を繰り返している人が多く、これらの場合、腰痛の根本的な原因を除去していないため一時的に痛みがよくなっただけである。

診断は神経学的な検査はもちろんのこと、背骨の形態がバランスよい形であるかどうかを調べることも大切である。二本足歩行のため、背骨の形態が悪いとその周りの筋肉に負担がかかって腰痛を誘発する。

そして血液検査などで全身的に異常がないかどうか調べることも大切である。なかには内臓に癌がありそれが転移して腰痛を起こしている場合もある。会社や家庭に何かストレスを感じるものがないかどうかを知ることも大切である。

いずれにしても、頑固な腰痛もちの人は遺伝的に背骨の形態に原因があり、そこへ様々な要因が重なっている。治療は心理療法や神経ブロック治療をする心身両面から身体を整える方法がよい。また軽い腰痛を放っておくと、高齢者特有の病気につながることもあり、注意を呼びかけたい。

緩和ケア病棟(ホスピス)


最近、ガン末期の患者が、限りある時間をその人らしく生きることを支援する緩和ケア病棟(ホスピス)と呼ばれる施設が増えつつある。1990年に緩和ケア病棟(ホスピス)が認可制度になり現在、全国に約百カ所以上が設立されている。

従来の一般病棟でのホスピスケアは身体的なケアが中心で、本当のがん患者の苦痛や苦悩を取ることは、病院経営の面からも時間、経費などの関係でなかなか難しくホスピスケアとしては不十分である。

また在宅でホスピスケアをすることは、人生の質の向上や人間全体の苦痛や苦悩を解消することが出来るという面では、一応ホスピスケアのニーズに合っているが、医療チームが常にいないため、身体的なケアの面で難しいところがある。

一方、緩和ケア病棟では医療費は定額で保険適用され、十分なスペース、静けさ、明るさがあり医師、看護師のほかに、薬剤師、カウンセラー、ケースワーカー、理学療法士などで形成されたチームで総合的にケアすることが可能であり、患者、家族のほかにボランティアも加わり、お互いに苦痛や苦悩を分かち合いながら全人的な医療が可能である。

また緩和ケア病棟では医療チーム、家族、ボランティアなどが自分自身の死生観を養うことで人間的成長につながり、今後日本が真に先進国として認められるためにも、このような医療を進める必要がある。

延命


医療技術の発達により、命を機械で延ばすことが可能になってきた。「延命」は大きく二つに分けられる。若い人が交通事故などで命の危機にさらされた時などに行う延命と、もう一つは、高齢者が病気で終末期を迎える時の延命である。

若い人に対しては、たとえ1%の可能性にかけてでも延命治療を行うが、高齢者に対して治る可能性の低い手術をしたり、救命のための濃厚な治療を行うことは、よく考える必要がある。

一つしかない命、一度しかない人生、一分一秒でも長生きしたい気持ちはわかるが、植物人間のような状態での延命はよくない。

少子高齢化が進み、しかも高齢者の有病率が高くなっている今日、医療費の増大などが社会問題化している中で「延命」についてもう一度よく討論する必要がある。

また、安楽な日を一日でも長く、かつ、充実した生を最後まで送れるような医療の在り方を考える必要がある。高度な医療技術と医療機器を駆使した先端医療は、常に、それを使う医療人の「こころ」のレベルで価値が決まる。

しかし、一番大切なことは、若いころより健康に気をつけて、一日一日を充実させ、元気に年をとることである。元気で寿命をまっとう出来れば、「延命」などという言葉は不必要になるはずだ。

笑いの効能


ちょっとした事故やストレスが原因で、長期間頭痛や頚部痛などに苦しんでいる人は多い。そうした人たちに共通していることは、顔の表情が硬く、笑顔が少ないことである。慢性的な痛みのために精神的に落ち込むのは無理のないことであるが、このような状態は痛みを増幅させ、悪循環を形成して、痛みは決して消えない。

人間の体には自然治癒力があるため、85%の病気は自然に治るといわれている。そして、この自然治癒力は、笑うことで高められる。大笑いをすると、交感神経の働きが強まり、血圧や脈拍が上がる。また、運動を続けることによって分泌されるといわれるベーターエンドルフィン(体内モルヒネ)が分泌されることも証明されている。

落語を聞いたり漫才を見たりすることにより、免疫力が高まるといわれる理由がここにある。また、笑うことにより発ガン防御を担うリンパ球のナチュラルキラー細胞が活性化され、免疫機能がアップし、発ガンやガンの進行が抑えられる。

逆に、元気のない落ち込んだ状態ではナチュラルキラー細胞の活性は低下し、免疫力が落ちるため、病気は治りにくくなる。一部の病気を除いて、ほとんど全ての病気が治るということを信じ、できるだけ意識して笑いを取り入れる生き方が、何よりの病気治療法になる。

生活習慣病


医学の進歩により、心疾患、高血圧、糖尿病などの生活習慣病は、若い頃から継続して行うバランスのとれた運動と食事、ストレスに打ち勝つ精神的な強さを養うことによって予防できることが立証されている。そして自ら健康を管理するためにウォーキングやジョギングをしたりフィットネスクラブに通ったりする人が増えている。

また職場においても、疾患予防のための定期健診や体力測定を行ったり、周囲の環境を整えてストレス要因などを取り除く努力がなされている。

しかし一方、不況が続く現況では、ただ単に決められた健診を受けてはいるものの、脂質異常症や糖尿病などは悪くなるまで何の症状もないため、重症の脂質異常症や糖尿病がどんどん増え、また、いろいろな生活習慣病が増加している。

個人の自助努力はもちろん必要だが、もっと大切なことは国が行うべき正しい健康教育である。幼稚園や小学校の頃からしっかりとした健康に対する知識を教えなければならない。そのためには、病気を治すことが主になっている今の医学教育をもっと充実させ、健康を維持増進させる方法も教える必要がある。そして、医療人自身はもっと自分自身で健康の維持、増進に励み、自信をもって他者を指導できるようにならなければならない。医師や政治家が生活習慣病になるような国には将来がない。

肥満について


肥満は大きく分けて遺伝や体質によるものと、精神的なものが原因となった過食によるものがある。遺伝や体質によるものはまれで、過食による肥満が圧倒的に多い。

 現代社会のもつストレスが関係しており、欲求不満を満たすために過食に走っている。治療方法は、食べることによって得られる満足感を何か他の対象に変える必要がある。それには、まず本人に肥満によって将来受ける身体的、精神的不利益について十分理解してもらうことから始める。

 次に運動療法と食事療法を始める。最初は人間の体を支えている骨の老化予防のため頚椎、腰部、膝などの筋力強化を行う筋力トレーニングと心臓などを強化する有酸素運動をはじめ、まずバランスの良い疲れない体づくりをする。

 運動療法が軌道に乗ると次に食事療法に入る。「食べるな」というよりもまず身のまわりから間食となるものを一掃すること、またテレビを見ながら食べ物を口に運んだり、会話に夢中になって噛むことに意識を集中しないのは良くない。

 楽しく食事をすることは大切だ。また多品目をバランス良く取り、噛むことを意識しながらゆっくりと時間をかけて食事するようにしたい。運動と食事に時間をかけることが、肥満を解消して丈夫で長持ちする体を作る唯一の方法である。

挨拶について


病院内で生活していると、医師、看護師、その他の医療スタッフで、「こんにちは」「お大事に」などの挨拶がきちっとできない人が多いことに驚かされる。最近は、何も医療スタッフだけに限らず患者にも全体的に言えることである。しかし診察を受けにくる高校生などのスポーツクラブの選手やプロスポーツ選手は、大きな声で「ハイ」「こんにちは」など挨拶してくれ、こちらも実に気持ちが良い。

 また、医療情報が充分公開されていないなど、医療者側と患者・家族のコミュニケーション不足が問われているが、案外この問題にも挨拶が関連しているような気がする。良好なコミュニケーションには挨拶が不可欠であり、たとえ外来の待ち時間が長くても、順番がきて医師・看護士が「お待たせしました」と挨拶すれば、その後の診察中のコミュニケーションもお互い感じが良い。

 患者の人間性や個別性を配慮した全人的な医療が求められる中、病気を根本的に治すためには、情報を共有しお互い対等な関係を築くことが基本である。携帯電話や電子メールなど人間性が希薄なコミュニケーション手段の利用が加速している世の中だが、そういう時代だからこそ、挨拶を今一度見直したい。

大温泉ブーム


最近、都会の真中でも温泉が掘られて大温泉ブームが起きている。昔から日本人の風呂好きは有名で「湯治」として、色んな病気の治療にも利用されてきた。人の体は、温めると血管が広がり血液循環がよくなり、新陳代謝を促進し筋肉のこりや痛みがとれる。風呂の適温が41度から43度と言われているが、この温度は少し高くその結果、交感神経の緊張が高まり、一時的に血管が収縮し血圧があがり心臓疾患や高血圧の人は注意が必要である。

 一方、35度から40度のぬるま湯にゆっくりつかると副交感神経の働きが強まり血圧が下がる。また筋肉は弛緩し、ゆったりとした気分でストレス解消になり、神経痛など色々な病気の治療にもなる。なめると塩辛い塩化物泉は、皮膚についた塩分が汗の蒸発を防ぐため保湿効果が高い。また卵の腐ったような匂いのする硫黄泉は、皮膚の角質を溶かすのでニキビやアトピーなどの皮膚疾患に効果がある。これらは温泉の化学的な効能である。

 また温泉には環境効能があり、湯治の多くは山の中や海岸など自然豊かなところにある。日々の生活環境から離れ、心の疲れを癒すことができる。

 過労死や職場不適応などストレスによって引き起こされるさまざまな疾病が蔓(まん)延している今日、時にはひなびた温泉地に行き、都会の雑踏からも離れ、気分転換をするというライフスタイルも、健康を維持増進するためには大切なことだ。

青年期には


一般には青年期は15歳から25歳で、思春期に自我に目覚め、大人に反抗的な振る舞いをする時期が続き、やがて成熟期にはいり就職や結婚などの人の一生を決める重要な時期となる。

 しかし、最近特に精神面での発育が遅く青年期が長く続く傾向にある。若者は結果を求め過ぎるあまり、無駄な努力や回り道を避ける方向にある。この時期は結果だけの評価ではなく、失敗を重ね挫折を経験し、より多くの体験を積みながら常に前進する努力が大切である。

 青年期には特有な病気は少ないが、精神的に未発達な状態で不安定なときに人生の重要な決定を迫られ、それに伴う生活の急激な変化があり、大きなストレスとなる場合が多い。

 できるだけ早い時期に心身を十分に鍛え、その機能を高めることは人生を豊かにするための必須条件である。そのためには心身の教育と、よりよい環境づくりが必要であるが、今日の日本ではこの教育や環境は充分とはいいがたい。

 青年期に正しい生活習慣を身に付け、人間としての正しい考え方や価値観を確立し、人生で一番大切な健康をいかに守るかを勉強しておく必要がある。若いときは体力もあるため老化が始まっているという自覚はない。

 しかし、この時期から毎年骨や血管の老化が始まっている。生活習慣をより健康的にすることにより40歳以降の老化を遅らせ病気にかかることを少なくすることができる。